マンションを出た私は、駅前広場にあるベンチに座っていた。 行くとこなんてない。 だけど、あの空間にいるのが嫌だった。 黙って出て来たことには少し後悔していた。 けど、今更、戻ることなんて出来ない。 鞄から携帯を出して、ふたつ折りの携帯を開けた。 アドレス帳を呼び出す。 携帯のアドレス帳に登録してるのは2件だけ。 ご主人様と先生――。 先生に電話してみようか……でも……迷惑? 先生が前に見せた顔が頭に過ぎった。 でも……でも…………。