「じゃ、行ってくる」 彼は鞄を持って、玄関に向かった。 私も後ろを付いて行く。 革靴を履いた彼が、こちらに向いた。 「家のこと、宜しくね」 「はい」 「じゃ……」 言わないと……。 早く言わないと行ってしまう。 「あっ!あのっ!」 「ん?」 玄関のドアノブに手をかけていた彼がこっちを向いた。 「あの……い、行ってらっしゃいませ……ご、ご主人様……」 そう言ったあと、彼……いや、ご主人様を見ると、ビックリしたような顔をしていた。