足りないどころか多過ぎるよ。
だって彼が差し出したお金は全て万札で、しかも万札が多分3枚くらいある。
「多過ぎます……」
そう遠慮がちに言ってみた。
「そう?でも何があるかわからないし、それに凛子の好きな物も買っていいんだよ?」
「えっ?それは……だって、ちゃんとお給料を頂けるわけですし……」
3食付いて、しかも立派な部屋も与えてもらってる。
なのに彼が提示してきたお給料の金額は、自分が想像してたより遥かに多かった。
「いいから。ねっ?」
そう言って、彼は私の手にお金を握らせた。
温かい彼の手に触れられ、再び胸が大きく高鳴った。
「それから……。凛子?手の平を上にして手を出して?」
「こう、ですか?」
「はい。これも持ってて?」
そう言って、差し出した手の平に銀色の物を落としてきた。
「これ……」
「ここの鍵。必要だろ?」
私はコクンと頷いた。
確かに買い物行ったりするから鍵は必要。
だから彼は私に鍵を渡したんだ。
なのに……何で手の平に乗ってる鍵を見てドキドキするんだろう……。



