食事の後、私はキッチンで後片付け。
彼は自室で仕事に行く用意をしている。
「凛子?」
支度を終えた彼がリビングに入って来て、キッチンにいる私に声をかけた。
「はいっ!」
水を止めて振り返る。
うわぁっ!
カッコイイ――。
目の前にいるスーツ姿の彼。
当たり前だけど、スーツ姿を初めて見た私の胸はドキドキしていた。
昨日から一体、何回ドキドキしてるんだろう……。
クビにならない限り、ここで働くつもりでいる。
私の体は持つんだろうか?
「仕事、行って来る」
「あっ、はいっ!」
腕時計をしていた彼は、スーツの内ポケットから長細い黒色の財布を取り出した。
「食費とか雑費とか、これで足りる?」
そう言って、差し出された手元を見た。
「えっ?」
「足りない?」
私はクビを左右に振った。



