「荷物、置いて?」
彼の言葉に素直に従う私。
キャリーバッグの取っ手から手を離し、ボストンバッグは床に置いた。
彼の手が私の肩を優しく掴む。
ビクッと体が反応する。
そのまま体をクルッと転させられた。
彼と向かい合わせになる。
彼は私を優しい顔で見下ろし、私は涙の溜まった目で彼を見上げる。
「今日から、お願い出来る?」
「えっ?」
「メイドの仕事」
彼がニッコリ微笑む。
私でいいの?
ホントに私でいいの?
「返事を聞かせて?」
「私でいいんですか?」
「うん」
再び彼が微笑む。
「よ、宜しくお願いします!」
私は彼に頭を下げた。
「こちらこそ宜しくね」
これが、私とご主人様との出会いだった。
これから私の運命は大きく変わっていくなんて、この時は知る由もなかった――……。



