先生の胸に顔を埋めたまま、恥ずかしくて顔が上げられない。
先生の“トクン――トクン――”っていう規則正しい胸の鼓動が聞こえる。
「俺、佐々木が楓のとこで働いてるってわかった時、佐々木に見せるアイツの笑顔が嫌だったんだ。キスしたのだって、何であんなことだろうって思ったけど、今から考えると楓に嫉妬してたのかもしれない……」
嫉妬?
先生がご主人様に?
「何度も何度も佐々木は俺の元教え子なんだって言い聞かせた」
先生がそう言った時、動物園で先生が言った言葉が頭を過ぎった。
“教師と元教え子……。それ以上でも、それ以下でもない……かな?”
「でもダメだった……。そう思えば思うほど、胸が苦しくなって……楓に嫉妬して……。佐々木が抱いてって言った時、本当は抱いてやりたかった。めちゃくちゃに抱いてやりたかったんだ……」
先生……。
「佐々木?顔、上げて?」
先生にそう言われて顔を上げる。
私を見下ろす先生は、さっきとは違って軟らかい表情を見せていた。



