「佐々木、俺の話を最後まで聞けって!」
「えっ?」
私は涙を拭っていた手を止めて先生を見た。
「俺は、お前に同情なんかしてない」
「うそ……」
「うそじゃねぇよ」
先生は私の目を真剣な顔をして見る。
「俺は、楓と違って、ただの公務員だ。
教師なんて世間で思われてるほど給料なんて高くなくて、楓みたいに高級な店に連れて行くことも出来ないし、高い物も買ってやれない。
だから佐々木のことを満足させてやれないかもしれない。
でもな、俺は……俺は、佐々木と一緒にいたいと思ったから……だから……」
「…………せん、せ……」
涙が止めどなく流れてくる。
そんなこと言われたら……私……。
その時、先生が私の腕を引っ張った。
勢いよく先生の胸に飛び込む。
先生の甘い香りが鼻を掠め、先生の温かい体温が伝わってきた。



