「先生?」
「ん?」
先生は海を見つめたまま返事をした。
「今日は、ありがとね……」
「いや……」
先生はコートのポケットからタバコを取り出した。
1本、口に咥えてタバコに火をつける。
先生の口から吐き出されたタバコの煙りは、冬の冷たい風に乗って消えていく。
「なぁ、佐々木?」
「ん?」
「お前、これからどうすんだ?」
あ、そっか……。
私、帰る場所がなくなっちゃったんだ……。
どうするか、なんて全く考えてなかった。
「あー……えっと、また住み込みで働けるとこ探すよ」
私は自分の足元を見ながらそう言った。
家のない私は、住み込みで働けるとこを探す他なくて……。
「あのさ……」
「ん?」
私は顔を上げて先生を見る。
先生は携帯灰皿にタバコを押し付けた。



