「……木?佐々木?」
「へっ?」
助手席の窓から先生の方へ向く。
「朝飯、食ったか?」
「うん……」
初めて食べた、ご主人様の手料理を思い出して胸が“ズキン”と疼いた。
「そっか」
先生はそれ以上、何も聞いてこなかった。
昨日のことも今日のことも何も聞いてこない先生。
こちらから話を振るのも何だかなって感じだし……。
このまま何も言わない方がいいのかもしれない。
てか、先生の車はどこに向かってるんだろう……。
先生のアパートとは逆方向。
郊外を抜け、海の方に向かって走ってる。
「先生?」
「ん?」
「どこ、行くの?」
「さぁ、どこだろうな。着いてからのお楽しみだ」
先生はそう言って、笑顔で私をチラッと見た。
そして、運転席と助手席の窓を少し開けると、タバコを口に咥え火をつけた。



