1歩外に出る。
“バタン――”
玄関の閉まる重たい音がした。
ご主人様と私の関係を断ち切る音。
それと同時に私の目から涙がこぼれ落ちる。
ポロポロと止まることなく流れる涙。
もう2度と、ここに来ることはない……。
この玄関の向こうに入ることもないんだ……。
高校を卒業してから今日まで、いろんなことがあった。
それが走馬灯のように頭に浮かぶ。
私はキャリーバッグを床に下ろして、振り返ることなく歩き出した。
キャリーバッグのコマが回る音だけが廊下に響いていた。
さようなら……ご主人様……。
さようなら……大好きだった人……。



