「何で?何でアヤが……」
先生は声を震わせながら低い声でそう呟いた。
ご主人様もアヤさんも何も言おうとしない。
先生はもしかして、まだアヤさんのこと…………。
「楓、何とか言えよ?」
先生が、ご主人様をキッと睨み付ける。
アヤさんは手で口を押さえたままオロオロした感じでいた。
「ここじゃ何だから……俺の部屋に行こうか?」
先生とは正反対に落ち着いた口調で、ご主人様はそう言った。
「アヤも凛子も一緒に……」
ご主人様はそう言うと、クルッと玄関の方に向いて歩きだした。
その後ろを無言のままアヤさん、私、先生の順番で付いて行く。
ちょうど1階で止まっていたエレベーターに乗った。
高級マンションだからエレベーターの中も広くて、ずっと1人で乗るのが怖いと思っていた。
でも今はエレベーターの中で4人が、それぞれ角に立っていて、広いエレベーターで良かったと初めてそう思った。



