「送っていくから……」
先生はそう言って、ベッドから立ち上がろうとした。
「い、いや!」
私はベッドから体を起こして、立ち上がろうとする先生の腕を掴んだ。
「佐々木……」
先生が私の手を離そうとする。
私は先生から離れないように、先生の腕を掴んでいた手に力を入れた。
「ダメなの……ご主人様のとこには帰れないの……」
「帰れない?どうして?」
「理由は……言えない……。でも今日は帰れないの……」
私は泣きながら首を左右に振りながらそう言った。
先生に理由は言えない。
ご主人様のとこにアヤさんがいるかもしれないから帰れない……そんなこと言えない。



