「先生?」
私は先生の背中に声をかけた。
「なぁ、佐々木?」
先生は振り向くことなく、私に背を向けたままだった。
「ん?」
「佐々木は俺に抱かれながら、頭の中では誰のことを想ってる?」
「えっ?そんなこと……」
「楓か?楓のことを想ってんのか?」
「違う!私は先生のことを……」
「何が違うんだ?」
先生が私の方を向く。
振り向いた先生の目は凄く切なくて……辛そうで……。
「私は先生のことを……」
“想ってるよ”と、そう言おうとしたけど
「じゃー何で泣くんだ……。何でそんなに涙をポロポロ流すんだよ」
と、先生にそう言われた。
えっ?
私は手で頬に触れてみる。
あ……ホントだ……。
私、泣いてる……。
その時、先生に言われて初めて自分が泣いてることに気付いた。



