「私が仕事をしてたのが意外だった?」
「えっ?」
「凛子さんの中では、私はお嬢様で親の金を湯水のように使ってる……そんなイメージがあった……違う?」
何だか心の中を見透かされてるようだった。
「あ、いや……そんなことは……」
「いいのよ。うちの家庭は金持ちでも何でもない、ただのサラリーマン家庭。しかも親は共働き」
「そうなんですか……」
「うん。だから大学を卒業して企業に就職して……でも、ある事情で去年の12月いっぱいで退職しちゃったけどね」
“ある事情”って何なんだろう……。
気になったけど、でも何か聞いたらいけないような気がして何も聞かなかった。
その時、店員さんが水を注ぎに席に来た。



