「私、楓に言ったの……」
何を言ったの?
「楓に好きだって。やっぱり忘れられないって……。楓は私を帰そうとしたわ。でも私は楓に最後に1回だけ抱いてくれたら忘れるって言ったの……」
「えっ?」
「でもね、楓は拒否したわ」
「じゃー……ご主人様はアヤさんを……」
抱かなかったの?
やっぱり、お腹の子はご主人様の子じゃないの?
何か頭の中がグチャグチャになって、わけわかんなくなってきたよ……。
「ううん……」
アヤさんは首をゆっくり左右に振った。
「はっ?」
「楓は抱いてくれた……。それは、私のことが好きとかじゃなくて、最後に1回だけ抱いてくれたら忘れるって言ったからだと思う。楓はね、ちゃんと避妊しようとしたの。でもね、その手を私が止めて……“安全日だから”って……。そんな保証ないのにね……」
アヤさんの目に再び涙が溜まっていった。
うそ……うそだよ……。
うそだって言ってよ……ねぇ……。
私の頭に鈍器で殴られたような衝撃が走った。



