「楓は悪くないの。悪いのは全て私なの。去年の3月……楓と凛子さんが出掛けようとしてたあの日……」
あ、ご主人様と動物園に行こうとしたあの日だ。
「楓は私に、マンションには来るなと言ったの」
「えっ?」
「今まで楓のマンションに自由に出入りしてたのに、急に来るなって言われて、理由を聞いても楓は何も答えなかった……。その時、凛子さんの顔が頭に浮かんで……もしかしたら楓は凛子さんが好きなんじゃないかと思ったの」
「えっ?」
私は、アヤさんの言葉に目を見開いた。
ご主人様が私のことが好き?
“ドキン”と跳ね上がる心臓。
ありえない。
ご主人様と私は、雇い主とメイドの関係なんだ。
ご主人様が私のことを好きだと言うのは、アヤさんの思い込み。
うん、きっと、そうなんだ。
自分にそう言い聞かせたのに……私の胸は“ドキドキ”と煩かった。



