誰もいない真冬の海は、闇に染まり波の音だけが静かに聞こえる。
海の見える場所に先生の車は止まった。
先生は体を少し前に倒して、ハンドルを包むように持ち、海を見ていた。
どちらからともなく話すことはなく、先生も私も静かな夜の海を見ていた。
そんな中、沈黙を破ったのは先生だった。
「なぁ、佐々木?」
先生は海を見たままそう言った。
「ん?」
「ゴメンな……」
「えっ?何が?」
私は先生を見た。
わかってるくせに。
先生が何で謝ってきたのかわかってるくせに。
私は先生にワザとそう言ってみた。
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