―楓Side―
「なぁ、アヤ?ここには来たらダメだって言ったよな?」
凛子が出て行った後、俺は泣きじゃくるアヤにそう言った。
「ゴメン、なさい……。ここには行かない……行ったらダメだって……そう自分の中で何度も何度も言い聞かせた……。でも……でもね……」
アヤはそこまで言うと顔を上げて、唇を噛み締めながら俺を見た。
「アヤ?俺はアヤの彼氏じゃない。彼氏役はもう終わったはずだ……。アヤには婚約者がいるだろ?」
9ヶ月前、凛子と動物園に行く約束をしていたあの日……。
アヤは俺のことが好きだと言ってきた。
でも俺は応えられないと断った。
それから2ヶ月くらい経ったある日、アヤから“お見合いした人と婚約した”とメールがあった。
俺はアヤのメールを見て安心していたんだ……。



