玄関にいた2人の脇をすり抜けようとした私を、ご主人様は止めたけど、私はそれを無視してご主人様の部屋を出た。
急ぎ足でエレベーターに乗って、1階のエントランスに行き、マンションの外に出た。
真冬の冷たい風が頬をすり抜ける。
吐く息が白い。
さむ……。
私はコートの胸元をギュッと握った。
どこに行こうか……。
一瞬、先生の顔が頭に浮かんだ。
鞄から携帯を出す。
履歴に残った“先生”の文字。
通話ボタンを押せば先生に繋がる。
でも先生のとこには行かないって……。
そう思ったのに……。
私は通話ボタンを押した。
耳に響く呼び出し音。
3回……4回……。
やっぱダメ……。
私はコールしている途中で携帯を切った。



