ご主人様が玄関に行って、どれくらい経ったんだろう……。
そんなに時間は経ってないはずなのに、もう何時間も玄関に行ってるような感じる。
訪問者と、どんな会話をしてるんだろう……。
その時……。
「お願い!楓、話を聞いて?」
訪問者……アヤさんの声がリビングまで聞こえてきた。
久しぶりに聞くアヤさんの声。
私の胸は“チクン”と痛んだ。
私はソファーから立ち上がって、リビングのドアに手をかけた。
ドアを開けて、リビングを出て廊下をゆっくり音を立てないように歩く。
玄関に通じる廊下が長く感じる。
この角を曲がったら玄関が見える。
玄関に近付いて行ってるんだから当然、ご主人様とアヤさんの会話が嫌でも耳に入ってきた。