ご主人様がリビングに戻ってきた。
「凛子?」
私の隣に座って、ガタガタ震える私を優しく包み込むように抱きしめ、頭を撫でてくれるご主人様。
フワッと香水の香りが鼻を掠める。
あの人とは違う優しい香り。
ご主人様に抱きしめられ、恐怖心でいっぱいなはずなのに……。
私の心臓は、このまま止まってしまうんじゃないかと思うくらい早く脈打っていた。
「凛子……もう大丈夫だから……」
「……ゴメン、なさい……」
「凛子は謝ってばかりだな」
ご主人様が私の頭を撫でながらクスッと笑う。
「だって……私が、ここにいなかったら……ご主人様に迷惑かけることなかったのに……」
「凛子は何も悪くない。だから何も気にしなくていいし、もう何も心配しなくていい」
「でも……」
私は顔を上げて、ご主人様を見上げた。
優しい笑顔で私を見下ろすご主人様。
どうしてメイドである私に対して、この人はここまでしてくれるんだろう……。