「凛子?そんなことないよねぇ?」
急に猫撫で声でそう言って来る母親。
私の体は恐怖でガタガタ震え、何も言えず、ただ首を左右に振ることしか出来なかった。
「凛子!」
私の頭の上から私の名前を呼ぶ怒鳴り声が降りかかる。
怖い……。
殴られる。
私は自分の頭を手で庇った。
「お母さん、やめて下さい。彼女が怖がってるじゃないですか」
ご主人様が私の背中を優しく摩ってくれた。
「和泉さん……って言ったっけ?アンタ」
私に殴り掛かるかもしれない勢いのあった母親は静かな声でそう言った。
「はい」
「さっきも言ったけど、凛子は未成年で親の管理下に置かれてる。
もし私が警察に言ったら……アンタはどうなると思う?
略取・誘拐罪、監禁罪、わいせつ罪……。
アンタは警察に捕まり、地位も名誉もなくなる……。
でもね、私も悪魔じゃないんだよ。
アンタを警察に突き出さずに内密にしてあげることも出来る。
アンタだって子供じゃないんだ。
私の言ってる意味わかるね?」
母親はご主人様に向かって、何か企んだようにニヤッと冷たい笑みを顔に浮かべた。



