「凛子、いい男連れてるね~」
私の気持ちも知らないで、母親はご主人様を見ると、呑気にそう言った。
ご主人様が今、どんな顔をしているのか怖くて見れない。
「凛子さんのお母様ですか?初めまして。和泉楓と言います。凛子さんは今、僕のところにいるので安心して下さい」
「へぇ……。で、アンタは何やってる人?」
「小さな小児科医院を開業してます。生憎、今日は名刺を持っていなくて……申し訳ありません」
「医者かぁ……」
母親はそう呟くと、ニヤリと笑った。
そして隣にいる男に耳打ちをした。
この人は何か企んでる。
「じゃーね、凛子」
母親はそう言って、男の腕に自分の腕を絡ませると、私たちの前から離れて行った。



