ご主人様は落ち着いた様子で、私と手を繋いだまま店内を見て回る。
私たちのことを悪く言ってた彼女たちの傍を通った時、ご主人様の無言の制圧に彼女たちは唇を噛み締めながらお店から出て行った。
「何かいいものあった?」
そう何事もなかったように聞いてきたご主人様。
「え、えっと……」
私はと言うと、ドキドキして顔も耳も熱くて、商品なんて見る余裕なんてなくて……。
そんな時、私の目に飛び込んで来たのは、耐熱ガラスで小さな花の絵が描かれたカップとソーサーと同じ絵柄の耐熱ガラスのティーポットのセットだった。
「これ可愛い」
「買う?」
「えっ?」
私はご主人様を見上げた。
「買っちゃおっか?」
「あ、じゃー私が……」
値段を見たら5000円しか財布に入ってない私でも買える値段だった。
「いや、いいよ。ちょうど新しいカップとティーポットが欲しいと思ってたから」
「でも……」
ワンピースも買ってもらったのに……。
新しいカップとティーポットが欲しいって言うのも嘘なのかも。
「じゃー……凛子には何か紅茶を買ってもらおうかな?帰ったらこれで一緒にお茶を飲もうか?」
それでいいのかな……。
“はい”と返事をしていいのか……。
私が返事をする前に、私の手から離れたご主人様は、店員さんの方に行ってしまった。



