私は何も言わず、ご主人様を見上げた。
ご主人様も彼女たちが言ってたのが聞こえたのか、私の不安そうな顔を見て、
「気にするな」
と、そう小さな声で言った。
「でも……」
私の気持ちは益々不安になっていく。
お店から早く出たい。
私が、このお店に入りたいって言ったばっかりに、ご主人様に嫌な思いをさせてしまった。
それと同時に、彼女たちに凄く腹が立った。
「ご主人様……やっぱり……」
そう言った時、私の右手に温かさが伝わってきた。
自分の右手に目線を落とす。
えっ……何で……？
ご主人様の左手が私の右手を握っていた。
そして握っていた手を少し緩めると、今度は指を絡めてきた。
世間で言う恋人繋ぎだ。
男性と手を繋いだことなんて初めてで、ビックリして戸惑っている自分がいるのに、私の胸はドキドキして今にも張り裂けそうだった。
