マンションの近くまでって言ったのに、先生はまたマンションの前まで送ってくれた。
「先生、ありがとう」
そう言って、車の助手席を開けようとした時、マンションの玄関から出て来る男性の姿が目に入った。
「ご主人様?」
遠くからだから、確定は出来ないけど、背格好がご主人様に似てる。
「あの人?」
先生が目を細めて玄関から出て来る男性を指差した。
「うん。多分……」
「元教え子が世話になってるから挨拶しとこうかな」
「えぇ!いいよ~」
「いいからいいから」
先生はそう言って、車から降りた。
私も慌てて車から降りる。
先生が助手席から降りた私の方に回ってきた。



