「今日はありがとう……。凄く楽しかった」
帰りの車の中。
運転している先生にお礼を言った。
「俺も楽しかったよ」
先生が前を見たままそう言った。
夕暮れ時。
西の空は真っ赤に染まっていた。
「ねぇ、先生?」
「ん?」
「あのね……」
「うん」
また……先生と、どっか行きたい……。
そう言いたかった……でもね……。
“教師と元教え子。それ以上でも、それ以下でもない”
先生の言ったことが頭を掠めた。
「やっぱ、いいや。何でもない」
「何だよ、それ」
先生がクスッと笑った。
そしてタバコを1本箱から取り出し、それを口に咥えると火をつけた。
私は助手席の窓から見える夕暮れの空を見ていた。



