「先生?」
私は窓の外を流れる景色を見ながら先生を呼んだ。
「ん?」
「大丈夫?」
「何が?」
「だから、私とご飯食べに行って……」
私は視線を窓の外から先生の方に向けた。
私がそう言うと、先生はクスクス笑い出した。
何がおかしいの?
私は先生のためを思って言ったのに。
「まぁ、昨日だったら行かなかったかもなぁ……」
「どういうこと?」
先生の言ってる意味がわからない。
私は首を傾けたまま先生を見た。
「今日で俺と佐々木は先生と生徒の関係じゃないだろ?」
「あっ……」
そっか……。
私は今日、高校を卒業したんだ。
だから今日から私と先生は生徒と先生の関係じゃなく、ただの男と女になったんだ。
男と女――。
今まで先生を先生としか見れてなかったのに……。
隣にいる人は先生じゃなくて1人の男なんだと思うと、急に恥ずかしくなった。



