電話を切ってからどれくらい経ったんだろう……。
橋の向こうから走ってくるスーツ姿の男性が見えた。
先生……。
「佐々木、どした?何があったんだ?」
先生は私の前まで来ると、肩で息をしながらそう聞いてきた。
「先生……あのね……」
乾いていた涙の雫が再びポタポタとこぼれ落ちた。
「泣いてちゃわかんないだろ?」
先生の手が伸びてきて、先生の白く長い綺麗な指が私の頬に触れた。
“ビクン”と体が反応する。
私は泣きながら先生を見上げた。
「捨てられちゃった……」
「はい?」
先生は目を見開いて私を見た。
「お母さんに……捨てられちゃったの……。お前なんかいらないって……」
「はぁ?マジかよ……」
先生は溜め息混じりにそう呟いた。
先生?どうすればいい?
私、どうすればいい?



