王子の傷。
最近は、いろんな表情を見せてくれるようになったし、口数も増えた。
あたしがボケれば、彼は突っ込んでくれるし
今までは無反応だった手のひらも握りしめれば、優しく握り返してくれる。
+チューは2回。
公園の時と、ついさっきの別れ際に。
――『妬いた?』
“妬きました”と目で訴えると、優しい唇がそっと重なった。
アキ先輩は、この学校の誰とも付き合っていないって言ってた。
高校に入ってから、誰とも付き合っていないはず。
だから、王子が高1であたしが中3の時って線は薄い。
もし、傷を負ったのなら……王子が中学生の頃だ。
多分……その時の、……
きっと、恋愛関係なんだろう。
ううん、“きっと”じゃない。
素直に認めようとしない自分に喝を入れる。
あたしは王子の初カノじゃない。
初めて認めた瞬間、淡い期待で膨らみっぱなしだったハートが一瞬で押し潰された。