恋して、チェリー



「大丈夫?」

「あれ、ここ……保健室」

「倒れたんだよ、ちぇり」


――教室の温度も、28℃を超えてて。
熱中症にかかりやすい環境だったんだよ。


そんなキナの話を聞いて、思い出す。

今日はやけに暑かったことを。



「それにちぇり、ミルクティーしか飲んでないでしょ?」

確かに、お水は飲んでないかも。


「今日は先生、出張中でいないみたいだからあたしが面倒みることになった」

――これ、飲んで?


スポーツドリンクを、サイドテーブルに置いてくれる。

まだフタが開いていないとこを見ると、きっと自販機で買って来てくれたんだ。


汗をかいているペットボトルは、テーブルを濡らしていた。



「もうすぐ今日の授業終わっちゃうから。それまで寝てなね」

「あ、比奈は?」

「授業出てる」

そっかぁ……きっとふたりであたしを保健室まで連れて来てくれたんだよね。



「キナ、ありがと……」

「比奈が何か企んでるっぽいよ」

唇の端を微かに上げて、イタズラに微笑むキナ。


「スペシャルゲスト呼んだげるって」

そう言って、ドアがパタンと閉まった。


まだ頭がグラグラする……スポーツドリンクを一口飲んだあたしは大人しく眠ることにした。