「くるみ……」
愛おしそうに、どこか苦しそうに絞り出したような声を出す男の子は。
溶けるような白い肌、ワックスでほどよく散らされた黒い髪。
恭一くんよりも、アキ先輩よりも……ずっとずっと高い身長。
黒縁のメガネが似合ってて。
切れ長な瞳――なんか生徒会長っぽいイメージ。
空也の隣で、なんとも呑気なことを考えていた。
「――…おいで」
「セ、ン……パ…イ」
シュンと小さくなった胡桃ちゃんは小さな子供のように見えて。
そろりそろりとゆっくり近付く彼女が焦れったかったようで、腕を強引に引っ張った。
「もう、離さない……」
「うん……」
え、な、なに……。
なになになに、一体なんなのこの展開は。
キツく抱き合うふたり。
胡桃ちゃんは、恭一くんなんてそっちのけで九条センパイとやらの背中にしっかりと腕を回してる。
「……」
「……」
「……」
ただポカンと見ていることしか出来ないあたしと空也と恭一くん。
「まさかこんなにウマくいくとはね」
どこか楽しそうな、驚く程場違いな声。
――アキ先輩だ。
「お久しぶりっす」
返事をする空也に、ただあたしは口をあんぐりさせることしか出来なかった。

