「ここがちぇりの高校かぁ」
興味津々といった感じで、あたしの背中側の校舎をマジマジと見つめる。
「う、うん……」
あ、れ――怒ってない?
あたしにサヨナラを言いに来たんじゃないの……?
そんな素振りを全く見せない空也に、焦りが募ってく。
「ちぇり、」
ふと、真剣な眼差しに捕らえられて。
身動きが――出来なくなる。
早く、早くこの場所から離れなきゃ。
出なきゃ……
「何ソワソワしてんの?」
恭一くん達が来ちゃう……。
「――、あ」
背中側に向けられた視線に、ゾクリと胸に痛みが走る。
もしかして――…?
「ちぇり、あの頃の気持ちは今でも変わらないよ」
動揺を隠すのに必死で、グイッと引っ張られた腕への抵抗が一瞬遅れる。
「好きだ、ちぇり……」
あの頃とまったく変わらない甘くて苦い、低音ボイス。
熱い囁きと共に、愛の告白を耳元で囁かれ。
次の瞬間には、頬に彼の唇が触れ視界は黒く染まる。
「――あ、やめ……て」
とっさに吐き出された抵抗の言葉なんて、風にかき消されていく。

