「ふふ……っ、試してみる?」
あたしなんてどうみても場違いなのに、お姉さんは柔らかく微笑んでくれた。
「でも、アナタにはまだ少し早いかしら」
子供扱いをされてムッと視線を返すと、慌てた様子でお姉さんは続けた。
「違うのよ、そういう意味じゃないの」
――ブライド・フレグランスって言って、花嫁さんが結婚式の時に付ける香水なのよ。
「……え?」
「まだあんまり知られてないのよね」
――花嫁は、英語でbrideって言うでしょ?
そ、そうだった……すぐに理解出来なかった自分が恥ずかしい。
「6月に結婚した花嫁は、幸せになれるって聞いたことあるかしら?」
「知ってます、ジューン・ブライド」
「そうそう、それ」
――それをコンセプトに、この香水は作られたのよ。
そう話すお姉さんは、どこか寂しそうだ。
「6月限定で販売って当初から決まっているから」
――残念ね。
そうだ、……これは偶然なのか、運命なのか。
今日は6月最後の日。