【短】好きな人には彼氏が。

『信人にプロポーズされた』


電話の向こうで、啜り泣く声が聞こえる。


俺の時間は止まってしまったかのように、力を無くしてしまった…。


『翔太…?』


消えてしまいそうな小さな声。

その全てが愛おしい。


「……そっか。ちゃんと返事したか?」


俺はいつも通りにできてるのだろうか。

つか、まともに話せてる?




『うん…。OKしたけど、夢みたいで』


時に神様はとてつもなく意地悪で、チャンスすら与えてはくれない。


あのときあぁしてれば…なんて、本気で生きてない証拠。

何があったって文句は言えない。


それを正に今、痛い程感じた。


「……よかったな」


”おめでとう”すら言えない小さな俺。


花梨はこれからずっと、俺以外の男の側で笑うってこと…。