Monsoon Town

五十嵐はフッと笑うと、
「だよな、お前は昔からそう言うものに疎かったもんな」

そう言って髪をかきあげた。

「容姿、知識、家柄は全て完璧で、黙ってても女が寄ってくるのに、お前はいつも断ってた。

特に、交際に関しては断ってたな」

「大抵の女は、俺よりも金の方を愛してたヤツらばかりだった」

ため息混じりに陣内が言った。

「まあ、そう言うことだろうけどな」

フフッと笑う五十嵐を陣内は複雑な気持ちで見つめていた。

金の方を愛してたなんて、ウソもいいところだ。

(――いらなくなったらすぐ捨てるくせに、飽きたらすぐ捨てるくせに)

陣内は口で言う代わりに、心の中で言った。