壁のような茶色のドアを開けた藤堂を出迎えてくれたのは、燕尾服をきた初老の男だった。

執事の奥田である。

「お久しぶりです」

藤堂は彼に頭を下げた。

「こちらこそ、龍平坊ちゃまがいつもお世話になっております」

奥田は丁寧な言葉づかいで紳士的に対応した。

さすが、長い間陣内家に仕えているだけのことはある。

「会長はお見えでしょうか?」

「はい、リビングの方で待っておられます。

すぐにご案内します」

奥田の後をついて行くように、藤堂は歩いた。

赤いじゅうたんが敷かれた廊下には、チリどころか髪の毛1本すらも落ちていない。