Monsoon Town

「…はっ?」

そう言った陣内に、藤堂は驚いたように目を見開いた。

「彼女の記憶が戻るまでだ、じいさんには子猫を1匹飼ったとでも言えばいい」

「けど、陣内…」

藤堂が反論しようとしたら、
「俺の言うことに逆らうつもりか?」

ギロリと、鋭い眼光の瞳ににらまれた・

「自分の名前すらわからない彼女を、外へ出させる訳にはいかないだろ」

そう言った陣内に、
「…わかった」

あきらめたと言うように、藤堂が呟くように言った。

寝室からリビングに戻ると、ソファーのうえにはまだ少女がいた。

陣内たちがリビングに入ってきたとたん、少女は目を伏せた。

陣内は深呼吸をすると、少女のところに歩み寄って腰を下ろした。