Monsoon Town

「専門が違うからうまく言えないんだけど、彼女の身に何か忘れたいような出来事があったんだと思うんだ。

それを強く願うと、今の彼女みたいに記憶を全て忘れて…。

俺も詳しくは言えないんだけど、彼女の身に何かあったのは確かなことだと思う」

専門が外科である北川はそう言った。

「そうか…。

じゃあ、どうすれば…」

呟くようにそう言った陣内に、
「あまり急いで彼女の記憶を戻すのは、彼女がパニックになるからやめた方がいいと思う。

ゆっくりと時間をかけて、彼女の記憶が戻るのを待った方がいい」

北川が言った。

「…わかった、そうしよう」

陣内は首を縦に振ってうなずくと、
「藤堂」

そばにいた藤堂を呼んだ。

「彼女をここに住まわせる」

陣内が藤堂に言った。