Monsoon Town

けど、目は伏せたままで表情は見えなかった。

「2人共、ちょっと…」

深刻そうな顔の北川に呼ばれた陣内は、彼に従うしかなかった。

リビングから離れて陣内の寝室に集まった。

「記憶喪失?」

北川から聞かされたその言葉に、陣内は聞き返した。

「彼女は、今までの記憶を全て失っている」

「けど、彼女の躰に目立った外傷はなかった。

彼女が倒れていたところは道路だったけど、車にひかれた様子もなかった」

そう言った藤堂に、
「彼女の記憶喪失は、精神の方からきていると思うんだ」

北川が言った。

「精神?」

初めて聞いた言葉のように、陣内は聞き返した。