Monsoon Town

ふと、北川の手元に視線を向けた陣内はあるものに気づいた。

「北川」

名前を呼んだ陣内に、
「何?」

北川は返事をした。

「――結婚したのか?」

そう聞いてきた陣内に北川は自分の左手に視線を向けると、
「ああ、これのこと?」

陣内の前に薬指のシルバーリングを見せた。

「結婚したよ」

幸せそうに微笑みながら、北川が言った。

「今年の4月に、つきあってた彼女と」

「…そうか」

呟くように、陣内は返事をした。

「藤堂、北川に部屋を」

「わかった」

藤堂と北川がリビングを後にした。