Monsoon Town

ひまわりの花は大嫌いだった。

何故なら、あの出来事を思い出すからだ。

そして、あの人を思い出すからだ。

陣内がひまわりを嫌うのは、それらの理由だった。

突然のように口を閉ざした陣内に、綾香は首を傾げていた。

(一体何があったのかしら?)

そう思いながら、綾香は庭に視線を向けた。

そこには、夏の象徴であるひまわりが咲いていた。

太陽の光をいっぱいに受け止めて、まっすぐに力いっぱいに、誇らしげに咲いていた。

鮮やかな黄色の花びらがまぶしい。

ひまわりを眺めた後で、綾香は陣内に視線を向けた。

陣内は、自分を見てなかった。

代わりに、カップの中のコーヒーに視線を落としていた。