Monsoon Town

「どうかされたんですか?」

彼のその様子に、心配そうに首を傾げた綾香が聞いてきた。

「いや…」

口の中で、陣内は呟くように答えた。

綾香は庭の方に視線を向けると、
「あ、ひまわり」
と、言った。

その単語に、陣内は耳をふさぎたくなった。

「キレイですね」

庭に視線を向けたまま、綾香が話しかける。

陣内は話したくないと言うように、口を固く閉ざした。

「陣内さん?」

綾香が自分に視線を向けたのがわかった。

「ひまわり、嫌いなんですか?」

「――そう言う、訳ではない…」

口に出した答えは、弱々しいものだった。