Monsoon Town

「そうですね」

龍太郎の提案に彼女の父親も首を縦に振ってうなずいた。

突然の状況に、陣内は何が何だかわからなかった。

「ちょっと待て…!」

陣内が言っても、時すでに遅しだった。

気がつけば、綾香と2人きりにされていた。


手なれたように、綾香はスプーンでクルクルと紅茶を混ぜていた。

そんな彼女と向かいあいながら、陣内は複雑な気持ちになっていた。

「陣内さんって、実物の方がすごくかっこいいんですね」

カチャッとカップのうえにスプーンを置きながら、綾香が言った。

訳がわからないと言う顔をした陣内に、
「写真を見た後で実物を見ると、ガッカリしません?」

綾香は笑いながら言った。