「洗い物、終わったから」

そう言うと藤堂は、シャツのうえから身につけていた黒いエプロンを外した。

「すまないな、いつも」

視線は窓に向けたまま、陣内が言った。

「いつものことだろ。

主人の身の回りの世話をするのが俺の役目だ」

藤堂はエプロンを畳みながら言った。

「それが、陣内家と藤堂家の関係だろ」

「…聞き飽きたな」

未だにこちらを見ようとしない陣内に、藤堂はふうっと息を吐いた。

それから椅子にかけられていたネクタイを手に取ると、それを身につけた。

それに気づいたのか、
「出かけるのか?」

視線をこちらの方に向けると、陣内が声をかけてきた。