「はっ?」

聞き返した藤堂に、陣内は那智の手の中にある書類を奪った。

「この女が、秘書課に用事らしい」

(この女って…)

あまりの物言いに那智はムッとしたが我慢した。

「人使いの荒い主人だ」

差し出された書類を受け取りながら、藤堂は言った。

「親切でも、か」

“親切”を強調して、陣内は言った。

「わかったよ」

そう返事をした藤堂は那智に視線を向けると、
「どうもご苦労様でした」

陣内に対する態度はどこへ行ったと言うくらいの丁寧な言葉で、那智にお礼を言った。

藤堂は人のよさそうな笑顔を那智に見せると、その場から立ち去った。