口に出した覚えは全くないが、自分はそんな顔をしてたのだろうか?

「わかったと言うか、驚いたと言うか…」

呟くようにそう言った那智に、
「俺が社長の陣内龍平だ」

当たり前のように言った彼に、那智はどう答えていいのかわからなかった。

「こっちは、俺の秘書の藤堂だ」

「俺はついでか」

皮肉るように言いながら、藤堂は息を吐いた。

「ついでじゃなかったら何になる?」

「さあな、2番目とか?」

お互いの皮肉を簡単に返しあうことができるのは、社長と秘書以上の何かがあるなと那智は思った。

「そうだ。

藤堂、お前が代わりに渡しに行ってくれないか?」

陣内が言った。