冷房ですっかり冷えてしまった躰を熱風が包み込んでいた。

「――はい…」

ひまわりが首を縦に振ってうなずいた。

泣いた目は真っ赤で、まるでウサギのようだった。

「――わたし、すごく怖かったんです…」

ポツリと、ひまわりが言った。

「さっき、わたしに“ミユ”と言ってきた男の人――何だかよくわからないんですけど、ずっと昔から知っている人のような気がするんです」

そう言ったひまわりに、
「――えっ…?」

陣内は驚いて聞き返した。

(知りあいって、さっきは“知らない”と否定していたじゃないか)

そう思った陣内に、
「けど、怖かったんです…。

近づかれた時も、手をつかまれた時も、怖いって思ったんです…。

怖くて怖くて…」

声と躰を震わせて、ひまわりは目に涙をためた。