Monsoon Town

陣内と出会わなかったら、自分は夢ばかりを見ていただろう。

お気に入りの小説のような甘い恋に憧れて、王子様みたいな素敵な人と結ばれることを夢見ていた。

そんな自分を変えてくれたのは、陣内だった。

最初は、自分の理想じゃなかったから最悪だと思っていた。

けど…彼を知れば知るほど、そんな印象は崩れ落ちた。

同時に、陣内に恋をしている自分に気づいた。

結末は小説のような幸せな終わり方ではなかったものの、それでもよかったと心の底から思った。

「藤堂さん、陣内さんに伝えてください」

那智は言った。

「――あなたよりもいい人を見つけてみせる、って」