「――何やってんだろうな…」

荒い呼吸をしながら、陣内は小さな声で呟いた。

那智と綾香とひまわりが言い争いをしていた。

自分のことで、ケンカをしていた。

3人の気持ちは、痛いくらいにわかっている。

陣内が好き――ただそれだけである。

けど、そんな気持ちがあっても最後は自分を1人にする。

そんなことは、もうわかっている。

子供の頃に、そんなことは学んだ。

だから、怖い。

人を愛することも、愛されることも怖いのだ。

チラリと横を見ると、窓ガラスに自分の顔が映っていた。

切れ長の瞳が自分を映している。

ガラスに映る自分に向かって、陣内は小さな声で呟いた。

「――何で…何で俺を、捨てたんですか?

母さん…」